
キャンバス生地はスニーカーやバッグなど、ファッションアイテムに多く使われている人気の素材。カジュアルに使えるから、持っている方も多いですよね。でも、日頃のお手入れは意外に知られていません。そこで、靴職人がキャンバス地の靴のお手入れをご紹介いたします。
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キャンバス生地ってどんな素材?

キャンバス生地とは、帆布(はんぷ)と呼ばれる丈夫な厚手の布のことです。キャンバス生地は耐水性が非常に強く、濡れても水を通しにくい特徴があるため、スニーカーやバッグ、郵便物を運ぶ郵便袋など、様々なアイテムに使われています。
お家で洗えるかどうかの見分け方

キャンバス生地といっても、種類は様々。お手入れする際は、次の3点をチェックしてみてください。
□黄ばみ・シミがある
□一部に革が使われている
□パッチテストで色落ちする
いずれかが当てはまる場合、お家で洗うことはオススメできません。色落ちや色移り、シミになる恐れがあるため、専門の知識と技術を持つプロに相談してみましょう。
キャンバス地のスニーカーのお手入れ

【準備するもの】
・食器洗い用の中性洗剤
・メラミンスポンジ
・ブラシ
・洗濯用石鹸
・バケツ
・タオル
①パッチテスト
お手入れする前に、色落ちしないか必ずパッチテストをします。濡らしたタオルを固く絞り、目立たない部分を拭いて、タオルに色移りしていなければOKです。

②靴紐を洗う
靴紐を外して水に濡らし、中性洗剤でよく揉み洗いをします。

洗剤が残らないように水ですすいで日陰干しします。

ちなみに、靴紐が漂白された白色の場合は色落ちの心配がないため、酸素系漂白剤(液体)を使っても大丈夫です。5ml程度を水200mlに混ぜて、靴紐を入れて20~30分浸け置きします。浸け置きが終わったら、流水でしっかりとすすいで乾かします。

次の2足の靴紐は、右側が漂白された白色、左がアイボリーです。どちらもホワイト系の色ですが、漂白された白色の靴紐だけ漂白剤を使うことができます。アイボリーや他の色の靴紐は、色落ちしたりシミのような状態になるため、漂白剤は使わずに中性洗剤で洗いましょう。

③ラバー部分を洗う
メラミンスポンジに中性洗剤をつけ、少し揉んで馴染ませます。

つま先とサイドのラバー部分を擦り洗いします。メラミンスポンジには研磨剤が入っているため、白以外のデザインがラバー部分に入っている場合は、色落ちしないかどうかを目立たない箇所で試した後、擦り洗いをしましょう。

擦るときは、汚れがキャンバス地に流れて移らないように、靴底を下にします。5cmほど擦ってタオルで拭き取り、次の部分を擦ってまた拭き取る工程を繰り返し、ラバー部分をキレイにしていきます。

④全体を洗う
スニーカーの全体を、水で濡らします。

ブラシを水で濡らし、洗濯用石鹸をつけます。

スニーカーの内側・外側、ベロの部分、靴底など、全体的に洗います。

ブラシが入りにくい部分は、古歯ブラシを使って擦ります。

⑤流水ですすぐ
洗剤の泡が出なくなるまで、流水でしっかりとすすぎます。

⑥十分に水分を拭き取る
乾いたタオルで水分をしっかりと拭き取ります。このとき、決して擦らずにタオルで挟んで押すように拭くのがポイント。

古紙やわら半紙を丸めて、隙間のないようスニーカーの中に詰めます。新聞紙はインクが色移りする可能性があるため、淡い色のスニーカーの場合は避けた方が良いでしょう。
※急いでいる場合は、紙を詰める前にドライヤーをスニーカーの内側に3分ほどかけると、早く乾きます。
⑦陰干し
直射日光は避け、陰干しして乾かします。スニーカーの中に詰めた紙を入れ替えながら、1~2日ほど干して完全に乾かします。
⑧防水スプレー
汚れを防ぐために、防水スプレーをスニーカーから15cmほど離してかけます。防水スプレーは、屋外など換気の良い場所で使用してください。

「時間がない!」「忙しい!」という方は、靴紐・つま先・サイドのラバーだけでもキレイにすると、見た目の印象がぐっと変わります。
パンプスのお手入れ

パンプスのお手入れは、色落ちや型崩れを防ぐため、使う水を最小限に抑えて洗うことが大切です。また、汚れたらできるだけ早くお手入れすることで、汚れが落としやすくなります。
【準備するもの】
・スプレーヤー
・歯ブラシ
・タオル
・防水スプレー
①汚れている部分を水で濡らす
スプレーヤーに水を入れて、汚れている箇所に噴きかけます。このとき、水をかけすぎると型崩れの原因になる可能性があるので、注意しましょう。

②ブラシで汚れを掻き出す
水で濡らした箇所を歯ブラシで擦り、汚れを浮かせます。強く擦ると毛羽立って傷むため、優しくブラッシングします。

③タオルに汚れを移す
水とブラッシングで浮き上がってきた汚れを、乾いたタオルに吸わせて拭き取ります。汚れが目立たなくなるまで、数回繰り返し行ってください。

④日陰干しで乾燥
日陰干しで自然乾燥させます。急いでいる場合は、濡らした部分をドライヤーで乾かします。乾かしすぎてごわつかないように、ときどき手で触りながら乾かします。
⑤防水スプレーで汚れ防止
防水スプレーで汚れや雨から保護します。スプレーする際はシミになるのを防ぐために、15~20cm程度離して噴きかけましょう。
※防水スプレーは、屋外など換気の良い場所で使用してください。

靴修理店に任せた方が良いケース
①黄ばみ・シミ
キャンバス地の靴は革靴と比べると、お家でお手入れしやすく水洗いをする方が多いようです。でも、靴修理店への依頼が多いのは、定番の白いキャンバス地の靴なんです。

生成(きなり)やアイボリーなど、ホワイト系のスニーカーは黄ばみやすく、取れないというお悩みが多いです。スニーカーの黄ばみはご家庭で取ることが難しいので、プロに依頼するのがオススメ。よくある失敗は、黄ばみを取ろうとして余計に落ちにくくなるパターンです。キャンバス地のスニーカーは、時間が経つにつれて黄ばみが落ちにくくなるため、早めに靴修理店にご相談ください。
②一部に革が使われている靴
キャンバス地のスニーカーの中には、デザインとして一部に革を使ったものもあります。ご家庭で革を水洗いすると、素材を傷めたり色がキャンバス地に移ったりと失敗しやすいので、靴修理店にご相談ください。
③パッチテストで色落ちする靴
水で絞ったタオルで拭いて色落ちした場合、革と同様にご家庭で水洗いすると、色落ちしたり他の箇所に色が移ったり、色の濃い部分と薄い部分がまだらになったりする可能性が高いです。この場合も、無理に家で対処せず、プロに相談した方が美しく仕上がります。
まとめ
革靴と比べてキャンバス地の靴は気軽に家で洗えそうなイメージですが、実際そうではありません。今回のチェックポイントを確認して、正しくお手入れをしましょう。お手入れの最後に防水スプレーを噴きかけると、汚れやシミが付きにくくなるのでオススメです。
また、汚れが付着した場合は素早くお手入れすることで、完全に固まってしまった状態より落としやすくなります。お気に入りの靴を長く大切に履くためにも、日頃からこまめなお手入れを心がけましょう!