社内表彰を受けた際、記念で買ったかばん。学生の頃から「いつかは」と思っていたブランド品だ。営業マンであるおれは、このかばんとお得意先に向かう。ゲリラ豪雨の日も、竜巻の日も、ドカ雪の日も、ヒートアイランド現象が起こった日も。外を回れば、汚れもつけば傷みもでる。かばんは全体的にくたびれた印象を受けるまでになっていた。
思い入れのあるかばんだけど、買い替え時期にきている。でも、このかばんは高い。おいそれと買える代物ではない。そんなさなか、彼女の誕生日が近づいてきた。


言葉には出していないが、「その先」もよぎる女性だ。誕生日は盛大に祝ってあげたい。おれの気持ちをカタチに表すと、明らかにリッチになるのだ。自分のかばんに使う費用は、ない。でもかばんはきれいな物を使いたい。買い替えとなると誕生日の予算にシビレがでてくる。
どうする、おれ。打開策はどこにある。頭の中で出口のない問答がグルグルグルグル──やっぱり、新品を買うのだろうなぁ。